福岡高等裁判所 昭和47年(ラ)54号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔決定理由〕抗告人が本件不動産競売事件における債務者兼所有者であることは、本件記録に徴して明白であるところ、同記録に編綴されている登記申請書、土地、建物各登記簿謄本、増築部分の写真六葉および建物見取図によると、抗告人主張の別紙抗告の理由二記載の事実が認められる。ところが、同じく本件記録に編綴されている樋口勇作成の昭和四七年一月三一日付評価書によると、同評価人は、本件競売建物につき、一坪当り金一〇万円の二二、四四坪(七四、一八平方メートル。同建物の登記簿上の床面積は、前記のとおり一、二階延べ七四、〇七平方メートル)金二二四万四、〇〇〇円と評価していることが明らかであるところ、右建物とその敷地である別紙不動産目録一記載の宅地とを一括競売に付した本件競売手続において、その競売期日の同建物に関する公告には、現実の前記構造、床面積は併記されることなくして、単に登記簿上の表示にしたがつた不動産の表示が掲載され、かつ、その最低競売価額も右評価額どおりに掲載されたまま、競売手続が進行し、同建物についてはその競買価額を右評価額とする本件競落許可決定がなされるにいたつたことは、本件記録に照らして明白である。
そうすると、本件競売期日の公告に掲載された建物と現実の建物との間には、その延床面積の点において「二四、九四平方メートル(七、五五坪)」の、その構造の点において「軽量鉄骨造」の各差異があり、かつ、右建物の評価の基礎とされた床面積と事実上その床面積との間にも、「七、五一坪」の差異があつて、構造の変更および資材費、人件費等の高騰による建築費の一坪当りの単価の値上りはさておき、単に右差異七、五一坪のみを基礎として、前記評価人がしたように一坪当り金一〇万円の単価で計算してみたとしても、それだけですでに金七五万一、〇〇円の評価額の差異の生ずることが明らかであるから、それは、本件競売期日の公告に掲載された右建物の最低競売価額に影響を及ぼすばかりでなく、全体としての同建物の評価において経済上いちじるしい差異を生ずるものと認めるのが相当であり、したがつて、右公告は、結局、本件競売建物につき、不動産の表示および最低競売価額の表示を欠いたものというほかない。
してみると、右公告中本件競売建物に関する部分は、民事訴訟法第六五八条第一号、第六号所定の表示を具備しない違法があり、この違法は同法第六七二条第四号所定の異議の理由にあたるものというべきであるところ、建物とその敷地である宅地とを一括競売に付した場合、建物について競落不許の理由が存する場合は、宅地について競落不許の理由が存しない場合でも、その全部について競落を許すべきではないものと解するのを相当とするから、本件競落許可決定は、前同法第六八一条第二項前段により、全額取消しを免れない。
(亀川清 桑原宗朝 富田郁郎)